2026.02.13タイムレスな子供の教育
2026共通テスト「情報Ⅰ」記憶装置の適材適所とセキュリティの本質【文京区・新宿区のプログラミング教室が解説】

共通テストに「情報Ⅰ」が導入されて2年目。昨年よりも内容が少し難化し、問題数も増えていました。受験生や保護者の方で「単なるIT用語の暗記ではないか?」「PCが使えれば解けるのではないか?」という疑問を持たれている方も少なくないと思います。
しかし、実際の試験問題を読み解くと、その裏には「技術の背景にある論理」をどれだけ深く理解しているかという、極めて本質的な問いが隠されています。
文京区や新宿区でプログラミング教室を運営している当教室では、単に正解を導き出すだけでなく、その技術がなぜ現代社会に必要なのか、という「情報の意義」を深掘りして解説しています。今回は、2026年度共通テストの情報Ⅰ、第1問の問1で出題された記憶装置とセキュリティの2つの問題から、「コンピュータがどのような思想で設計されているのか」、そして「情報という形のない資産をどう守るべきか」というITリテラシーの本質に迫ります。そして、これからの時代を生きる子どもたちにとって、なぜ「論理的思考力」と「創造力」が欠かせない武器になるのかを、一緒に考えていきましょう。
1. コンピュータの記憶装置:なぜ「異なる場所」が必要なのか?
まず、コンピュータの心臓部とも言える「記憶」に関する問題です。まずは問題の内容を見ていきましょう。
【問題 a】
コンピュータの記憶装置は主記憶装置と補助記憶装置に大別される。一般に,主記憶装置に比べ,補助記憶装置はデータを読み書きする速度が[ア]であり,[イ]のために用いられる。
[ア] の解答群:⓪ 低速 ① 同程度 ② 高速
[イ] の解答群:
⓪ 容量が小さく,データの短期的な保存
① 容量が小さく,データの長期的な保存
② 容量が大きく,データの短期的な保存
③ 容量が大きく,データの長期的な保存
【正解と基本解説】
[ア]:⓪ 低速
[イ]:③ 容量が大きく,データの長期的な保存
教科書的な答えは、「主記憶装置(メモリ)は速いが一時的、補助記憶装置(SSD等)は遅いが大容量で永続的」というものです。しかし、ここには技術者が何十年も格闘してきた「トレードオフ」の物語があります。
【深堀りポイント1:メモリの階層化という知恵】

なぜ「高速で大容量で消えない」完璧な装置が1つあれば済むのに、2つを組み合わせるのでしょうか?その理由は、物理的な制約とコストにあります。
1. 2つの記憶装置:それぞれの役割と特徴

コンピュータには、役割の異なる2つの記憶装置が備わっています。これらは「速さ・容量・価格」において、それぞれ異なる特徴があり、まずはこれを確認しましょう。
・主記憶装置(メインメモリ): 電気信号でやり取りする主記憶装置(メインメモリ)は、ナノ秒(10億分の1秒)単位という圧倒的なスピードで動作します。その一方で、電気がないと内容を保持できない揮発性を持ちます。また、数百億個という膨大な数のトランジスタ(電流の増幅やスイッチングを行う電子素子)を高密度に集積する必要があり、その結果として半導体の面積が大きくなるため高価になります。
・補助記憶装置(ストレージ): 補助記憶装置(ストレージ)として一般的に用いられるSSDなどは、半導体メモリを用いて電源を切っても内容を保持できる不揮発性を持ちます。主記憶装置(メインメモリ)に比べて大容量かつ安価である一方、読み書き速度はマイクロ秒単位(100万分の1秒)となり、ナノ秒単位(10億分の1秒)で動作する主記憶装置(メインメモリ)よりは遅くなります。
2. なぜ「階層」になっているのか?
これらはバラバラに存在するのではなく、CPUに近い順に「主記憶 > 補助記憶」という階層構造を作っています。すべてを最速のメモリで構成すれば性能は向上しますが、前述の通り主記憶装置(メインメモリ)は高価であるためコストが跳ね上がってしまいます。逆に低速な装置だけにすると、CPUがデータを待つ時間が長くなり、全体の性能が大きく低下します。そこで、速度と容量の異なる記憶装置を組み合わせることで、性能とコストのバランスを取っているのです。
3. 階層化が有効な理由:プログラムの「局所性」

この階層化がうまく機能するのは、プログラムに「局所性(Locality)」という性質があるからです。
・時間的局所性: 一度参照されたデータは短期間に再度参照される性質
・空間的局所性: 参照されたデータと近いメモリアドレス(メモリ内のそれぞれの場所に割り振られている番号)のデータが参照される性質
コンピュータは、一度参照されたデータとそのデータと近いメモリアドレスのデータも含めて主記憶装置(メインメモリ)へおきます。そして、この局所性という性質があるために、主記憶装置(メインメモリ)においたプログラムやデータが繰り返し、あるいは連続して参照されます。その結果として、低速な補助記憶装置(ストレージ)を参照する頻度も減り、待ち時間を大幅に短縮できているのです。
学習のポイント:適材適所の設計
この「限られた場所を、目的に合わせて使い分ける」という考え方は、実はみなさんの生活の中でも自然にやっていることなのです。コンピュータの仕組みやプログラミングを学ぶことは、こうした「限られたスペースや時間を、どう配分すれば一番スムーズに物事が進むか?」を考える練習にもなります。この視点は、プログラミングで便利なアプリを作るだけでなく、将来社会に出てイベントの計画を立てたり、誰かに分かりやすく物事を伝えたりするときなど、「バラバラなものを工夫して組み合わせて、一番いい形にする」というあらゆる場面で、あなたを助けてくれる力になるはずです。
2. 情報セキュリティ:なぜ「バックアップ」はセキュリティなのか?
次に、情報セキュリティの3要素(CIA)についての理解を問う問題です。まずは問題の内容を見ていきましょう。
【問題 b】
情報セキュリティに関する記述として最も適当なものを,次の⓪〜④のうちから一つ選べ。
⓪ 犯罪につながる情報が公開されているWebサイトに日本国内からアクセスすると,不正アクセス禁止法違反になる。
① ネットワークの通信速度を高速にすることにより,マルウェアによる被害を最小限に抑えることができる。
② ソーシャルエンジニアリングによる被害を防ぐには,コンピュータの主記憶装置(メモリ)を増設することが有効である。
③ 保有するデータをバックアップしておくことで,情報セキュリティの要素である「可用性」を高めることができる。
④ ファイアウォールを利用することによって,無線LANでの通信内容が盗聴されることを防ぐことができる。
【正解と基本解説】
正解:③
セキュリティと聞くと、多くの人が「パスワードを複雑にする」「ウイルスソフトを入れる」といった機密性(Confidentiality)」を連想します。しかし、この問題の正解は「可用性(Availability)」にスポットを当てています。
【深堀りポイント2:「守る」とは「隠すこと」だけではない】
多くの人に「セキュリティって何?」と聞くと、「パスワードをかけること」「暗号化すること」という「隠すこと」を重視した答えが返ってきます。もちろん正解ですが、それは全体の一部に過ぎません。情報セキュリティには、国際標準で定められた「CIA」と呼ばれる3つの柱があります。

・機密性 (Confidentiality): 許可された人だけが見られる(隠す)
・完全性 (Integrity): データが改ざんされず、正しい状態である(正確さ)
・可用性 (Availability): 必要な時にいつでも使える(壊れない・止まらない)
今回の正解である「可用性」は、実は私たちの社会を支える最も重要な要素の一つです。例えば、銀行のATMが止まった、あるいは病院のカルテシステムがダウンしたとしましょう。データが盗まれていなくても(機密性が守られていても)、お金が下ろせない、治療が受けられないとなれば、それは致命的なセキュリティ事故です。
2025年10月に発生したアスクルのランサムウェア感染事故は、この「バランス」がいかに大切かを教えてくれました。ランサムウェアとは、「身代金(Ransom)」と「ソフトウェア」を組み合わせた造語です。コンピュータ内のデータを勝手に暗号化して読み取れない状態にし、元に戻すことと引き換えに金銭を要求する悪質なソフトウェアを指します。この事故では顧客情報の流出(機密性の侵害)というリスクに加え、システムがダウンして配送が止まる(可用性の侵害)という事態が起きました。アスクルの強みは、その名の通り「明日来る」というスピードです。しかし、システムが攻撃を受けて「可用性」が失われた瞬間、日本中の現場に荷物が届かなくなり、社会的な混乱を招きました。このように、バックアップは単なるデータの予備ではなく、こうした事態から「社会を止めない」ための防衛策となります。
【ここからさらに深掘り:現実のセキュリティの難しさ】

しかし、これほど重要なバックアップがあったとしても、「それだけで安心」と言い切れないのが現代のセキュリティの難しさです。なぜなら、巧妙な攻撃者は本番のシステムだけでなく、いざという時のための「バックアップデータ」そのものも暗号化してアクセスできなくし、身代金を要求するからです。さらに、データの復旧には膨大な時間がかかり、その間サービスが止まり続けることで損失は膨らんでいきます。
では、一刻も早く復旧させるために、犯人が要求する「身代金」を払えば解決するのでしょうか?現実問題として、警察庁やセキュリティ機関は「身代金の支払いは攻撃者の資金源になり、次なる攻撃を誘発するため推奨しない」としています。また、身代金を払ったとしても、データが正しく戻ってくる保証はどこにもありません。
だからこそ、私たちが考えるべき「情報の守り方」は、以下の2つの視点をセットで持つことです。
・「かからない」ための予防(機密性の維持): OSを最新に保ち、怪しいメールを開かない。泥棒に隙を見せない「家の戸締まり」を徹底すること。
・「かかっても立ち上がる」ための準備(可用性の確保): 攻撃の手が届かない場所にデータを保管し、万が一の時にどう動くか事前に決めておく。震災に備えた「避難訓練」のように、復旧の段取りを整えておくこと。
共通テストの問題文にある「バックアップで可用性を高める」という一文の裏には、こうした「トラブルに屈せず、いかに社会を止めずに立ち上がるか(レジリエンス)」という、デジタル社会を支えるための具体的なリスク管理の設計思想が込められているのです。
3. なぜ今、私たちは「情報」を学ぶのか?
共通テストで問われるのは、重箱の隅をつつくような知識ではありません。
・「なぜこの技術が必要なのか?」
・「もしこの仕組みがなかったら、どんな不利益が生じるのか?」
こうした「トレードオフ」の関係を理解し、その中で最適な解決策を見出す能力が求められています。コンピュータのメモリが2層に分かれているのも、セキュリティに3つの柱があるのも、すべては「複雑な社会を、効率的かつ安全に運営するため」の知恵の結晶です。
さいごに

「情報Ⅰ」の試験で問われる知識は、決して教科書の中だけの話ではありません。私たちが日々向き合っているプログラミングの世界や、その地続きにある現実の生活と深く繋がっています。
例えば、今回学んだ「記憶装置」の仕組みは、性質の異なるものをうまく組み合わせて、一つの仕組みとして動かすための知恵です。プログラミングで「論理的思考」を磨くことは、こうした「バラバラな要素をどう組み合わせれば、一番いい動きになるか」を試行錯誤する練習そのものです。そこには、限られた条件の中で新しい形を生み出す「創造性」が必要とされます。
また、アスクルの事例で考えた「可用性」という概念も、単なる難しい専門用語ではありません。それは、自分が創ったものを誰かに使ってもらうときに、「どうすれば壊れずに、ずっと楽しく使ってもらえるかな?」という、相手を思いやる優しさから生まれる視点です。
こうした「バラバラなものを工夫してつなぎ合わせる力」や、「使う人の気持ちを想像して、最後まで責任を持つ姿勢」は、将来どのような道に進んでも、周りの人から信頼されるための「一生モノの武器」になります。
当教室は、コンピュータの理論を一方的に教え込む場所ではありません。子どもたちがプログラミングという手段を使い、自ら「探究→創造→発信」を繰り返す中で、自分の頭で考え、自分の言葉で解決策を語れるようになることを目指しています。
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